リサーチャーの木村です
スカウトサイトで日々求職者様のレジュメと企業求人のマッチングをしていると、ここ数年の間にサイトにいる求職者様の経験スキルや希望に大きな変化を感じます
そこで、気になっているのが、「日本の働き方の未来について」です
今後どのように日本の労働市場が変化していくのか、また自分たち労働者もどのように変化していくのか、気になるところです
2016年に国(厚生労働省)が「働き方の未来2035」 ~一人ひとりが輝くために~
を公表しました。国が、日本の未来や日本人の働き方や労働市場について詳細に予想しています
今回は、その白書に書かれている内容のまとめ、公表から8年経過した現在の状況と今後について考察していきます
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000133449.pdf
~働き方の未来2035 要約~
国が目指しているす日本の未来の働き方:
「好きで得意な道」で技術革新をフル活用し、世界で類を見ないユニークな存在であり続けることを目指す
【2035年に想定されている日本の現状】
日本は1.27 億人から 1.12 億人に減少する
少子高齢化社会が進み、高齢化率が現在の 26.7%から 33.4%に上昇し、3人に1人が高齢者になる
【労働減少に伴い発生する現象】
労働人口の減少により、慢性的な労働力不足に陥る。特に 物流、介護、建設、飲食、製造 などが深刻に
AIの進化によって、「定型的な業務でかつ、多少の間違いが許容されるような作業」は人の代わりにロボットが代行するようになる
「広告、マーケティング、教育、金融、医療、法律、人事、警備・防犯、農業、物流、建築や土木、そして、日常生活における調理や掃除」など、多くの分野で人間を支援する
【AIとの共存】
AIにはできない新しいタイプの仕事が出現してくる
作業的な仕事はAIが人間の代わりに行うが、人間性に基づくような価値評価(面白いかどうか、美しいかどうか、おいしいかどうか、善か悪か等)は人間が行う必然性が高く、新しい仕事の形態になる
AIに奪われない仕事の 1 つとして「ヒューマンタッチ」の仕事がある
以下が今後重要になる仕事の一例
「接客」:低価格帯の小売に関してはロボットが対応し、付加価値の高い業態においては人間が対応するなど使い分けが進む
「起業」:企業の経営や企画にかかわるような仕事を人間がやる必要が高まる。人々のニーズを捉えるサービス開発、商品開発といったところが人間の仕事の主軸
【グローバル】
自動翻訳機能がAIでさらに進化することで、国を超えて人材の流動性が高まることになり、仕事においても、あるいは教育や医療においても、優秀な人材は国を問わず最も高く評価されるところに移動する
【労働者の多様化】
技術革新の進展やAIロボットとの共存により家事や介護のロボット化は家庭と仕事の両立を容易にし、労働者の年齢や働き方はますます多様になる
そのため企業や社会全体で個人の事情に柔軟に対応できる仕組みが不可欠である
グローバルな環境下では知的な仕事は空間を超えて遂行可能なので、成果の評価やフェアな働き方と報酬体系は重要になる
【働き方の変化】
■時間や空間にしばられない働き方に変化
作業現場に人がいなければならないような物理的な作業の大半は2035年までにはロボットがこなすようになっていて、各個人が、自分の意思で働く場所と時間を選べる時代、自分のライフスタイルが自分で選べる時代に変化している
■「働く」ことの定義、意義が大きく変わる
「働く」という活動が、単にお金を得るためではなく、社会への貢献や、周りの人との助け合いや地域との共生、自己の充実感など、多様な目的をもって行動することも包摂する社会になっている
自立した個人が自律的に多様なスタイルで「働く」ことが求められる
■正社員という制度がなくなる
ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに、別の企業に所属する
このように人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていくことで、正社員という制度がなくなる
■専門的な能力を身に着けて、複数の仕事をこなし、それによって収入を形成することになる
働く人は仕事内容に応じて、一日のうちに働く時間を自由に選択するため、フルタイムで働いた人だけが正規の働き方という考え方が成立しなくなる
複数の仕事は、必ずしも金銭的報酬のためとは限らない、社会的貢献等を主目的にする場合もある
どのような専門的な能力を身に着けたかで、どのような職業に就くかが決まる
ただし、技術革新のスピードが速いことを考えると、専門的な能力は、環境の変化に合わせて変化させていく必要がある
これまでのように企業規模が大きいことのみでは働く人のニーズを満たすことはできず、働く人にどれだけのチャンスや自己実現の場を与えるかが評価されるようになる
企業経営者も企業規模を拡大させることよりも、企業の個性を磨き魅力を高め、働く個人から選ばれる企業を目指すことが求められる
■コミュニティの変化
同じ企業で働いているという帰属意識よりも、同じ職種や専門領域で働いているという共通意識の方がより強くなり、SNSなどで疑似コミュニティを作っていくことになる
日常生活に重きを置くことで、地域コミュニティのつながりも強くなる
■地方のグローバル化
地方の中核都市や小さな町、村が、直接海外とつながっていくことがどんどん可能になり、地方の価値を海外に向けて提供していく時代になる
■介護や育児が成約にならない社会
AI など科学技術の発達による自動化・ロボット化によって、介護や子育て、家事などの負担から働く人が解放され、自由に働くことができる。保育や教育のインフラも整備され、0歳から希望者全員が保育や放課後預かりを利用することができるため子育て世代も働きやすくなる。
介護も健康管理のシステムにより要介護状態になる前に十分な予防的措置がなされ、かつ介護ロボットの導入によって介護の負担が大きく改善している。
■性別、人種、国籍、年齢、LGBT、障がい、すべての「壁」を超える
空間や時間の制約を受けない多様な働き方が一般的になると、性別や人種の壁、国境といった制約が急速に消滅する
国境を越えた人材流動が活発になると、より良い環境を求めて日本人が海外に流出してしまう恐れもある
日本を選んでもらうためには、世界最高水準の自由度を有した仕組みが構築されている必要がある
~まとめ~
白書の内容はいかがでしょうか?
8年間で進歩していることもあり、まだまだ停滞していることもあると感じました。
AI・IT技術の進歩、テレワークや働く場所の自由はパンデミックやチャットGPTの影響で進んでいると思います。
一方で、日本の子育て・介護のインフラやアウトソーシング、ワークライフバランスや幸福度の高い労働に関しては、「女性は●●するべき」というような古い時代から受け継がれている「固定概念」に未だに影響を受け、さほど大きな進歩が見られません。
この固定概念を一人一人が外していく努力をすること、また、何か大きなディープインパクトが起こらない限り、本当の意味での自由な労働、壁を越えた活躍 は遠い道のりだと感じます。
また、地方のグローバル化は、地方から東京圏への人口流出が加速している現状を見ると、かなり危機的状況なのではないかと思われます
若者(特に女性)がやはり固定概念に息苦しさを感じ、地方離れが進んでいるという問題も昨今メディアで大きく取り扱われています
このような点からも、日本の労働市場の進歩と発展を阻んでいるのは、「固定概念」によるところが大きいではないでしょうか?
ちなみに、この白書では「専門的スキル」「好きで得意なこと」を持つことが推奨されていますが、これを持てない・見つからない人々はどうなるのか?ロボットにも仕事を取られてしまうとすると、生きづらさを感じるのではないか?と疑問に思いました。この白書では、「優秀な専門スキルを持つ人材」 にしか焦点が当てられていないことが気になる点でもあります。
この白書も専門家たちが作ったということ、そしてそのような人々の「概念」が影響しているということも、忘れてはいけない点だと思います。
情報を鵜吞みにせず、「一人一人が、自分の力で考え未来を切り開いていく」 そういうスキルがこれからの時代必要だと思います。